2016年 10月 11日
記憶の糸 |

片方だけのピアス
白いブラウスについたシミ
落としたSUIKA
あの人の名前
焦点の合わないファインダーの画像みたいに
記憶のピントがずれたまま作動しない
やりきれない夏がようやく終わっても
バラバラのパズルは元に戻らない
空家になった蜘蛛の巣に
黄色い落ち葉がぶら下がっている
記憶の糸にしがみつくように
産卵した蜘蛛はもう帰らない
金色に光る家も
そこで夢を見たことも
愛したことも
愛されたことも
亡くしたものも
忘れたまま置き去りにして
いずれ北風が吹けば
記憶の糸も落ち葉も吹き飛ばされて
ピアスの行方もあの人の名前さえ
忘れたということすら忘れてしまう
そうやって
何も無い白い冬がやってくる
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by kakoneko-nyan
| 2016-10-11 00:42
| 庭